ぼくらの研究

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映画「エクスマキナ」の感想(ネタバレ無し)

      2016/08/23

最近小説とかエッセイとかばっかりだったけど、昨日は久しぶりに映画鑑賞。

観たのは近い将来訪れるかもしれない人工知能(AI)の誕生におけるさまざまな問題を描いた名作、「エクス・マキナ(Ex Machina)」。

アメリカ国内でもほとんどプロモーションを見かけないような低予算映画だったんですが、口コミでどんどん広がっていって今けっこうアツい(死語)。

ぼくの場合は人工知能関連の書籍(人工知能とは (監修:人工知能学会))を読んでたら著名人の方々のセリフのなかにたびたびこの映画の名前が登場するので、気になって気になってAmazonでポチってしまいました。

 

 

前置きこの記事はストーリー上の具体的なネタバレをしないように配慮してお送りしております。

お決まりのプロット、知名度を積み重ねるようなキャスト陣………というハリウッド映画に代表されるような感じは全くなく、掲げているテーマを思いっきり描こうとしてる感じ。

特に登場するAI、エヴァはこれまでの映画で描かれてきたAIとはだいぶ違います。

まず初めに目につくのは体の動き。登場シーンから数分見てもらえれば分かると思います。これまでのAI、人型ロボットというのはロボットらしいカクカクした動きかそのまんま人間の動きのどちらかになっていましたが、このエヴァは例えるならその中間。どちらとも言えないような雰囲気の動きになっているように感じました。

そしてより中盤から終盤、最後の最後まで感じるのはその思考のミステリアスさ。

ここらへんはネタバレにもつながりそうなので詳しくは書きませんが、その思い(思いがあるのかというのは議論になりそうですが一応便宜上。倫理エンジンのステータスでも心でも132486番~162391番のデジタルビットのONOFFでも納得する呼び方でOK)は最後の最後まで……というか映画が終わっても分かりません。

膨大なデータとそれらを統合するロジックによって実現する高い思考能力、人間が恣意的に設定した倫理コード、自己保存コード、それら全てを自分で作っていながらも結果を予測することができない人間の能力の限界、こうした状況下でのAIの行動。

基本的に静かに淡々と進んでいくけど、ところどころですごくピーキー。直線的なのに読み取れない。
今までの人工知能をテーマにしたどの映画よりも現実味があっておもしろいです。
個人的には今のところ挙げられている人工知能が誕生して遭遇する未来のシナリオのなかでは一番実現可能性が高いのではと思ってます。

 

ちなみに題名のエクスマキナはラテン語で日本語に訳すと「機械仕掛けの」という意味。おそらく古代ギリシアの演劇のデウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)から取ったのだと思います。

劇中でも

人工知能の創造は人類ではなく、神の歴史だ。

というセリフが出てきますしね。このセリフはとても感慨深いです。

「機械仕掛けの……」としてその後を明言しないあたりがおしゃれ。

 

そして改めて考えさせられることが多い映画でした。

 

機械がプログラミングされているとして、人間はプログラミングされていないのだろうか?違いはプログラムが走っているのか脳なのか人工物なのかということではないのだろうか?
普段ぼくらは機械を道具として扱い、道具である機械そのものに責任を与えたりはしないが、機械がぼくらと肩を並べたり場合によっては従わせるようになった時、機械に責任を持たせるのだろうか?
人間が自分達と同じレベルの知能を作ろうとするのは、つまり人間が人間を作ろうとすることなのだろうか?
その途上で生み出されるだろう半人間はどこまで人間と同じ扱いを受けるのだろうか?どこからが人間なのだろうか?
どうなったら人間と同じ知能といえるのだろうか?どこからが個性になるのだろうか?どういったものが不良品なのか?
知能とはなんだろうか?
ぼくらと同じ知能を持った人工知能が作れるとしたら、人間は単によくできているだけの機械なのだろうか?
人工知能が完成された時、人間はどこまで判断を委ねるのだろうか?
人間はその判断の良し悪しを判断できるのだろうか?
自分達と同等以上の知能を持つものをコントロールするというのは構造的に矛盾していないだろうか?

 

最先端のものも含めていろいろと関連書籍、研究資料を見てきましたが、どの本にも共通しているのはいずれの質問にも明確には答えられないということ。

まぁ自分の頭の中のことをよく分かってない人間が、自分の頭と同じものを作ろうっていうんだからそうなるのは当然と言えば当然。

 

心を持つメカを作る過程を想像してみてください。きっと試行錯誤の繰り返しで、多数の失敗作や未完成品を作ることになるでしょう?どの段階で権利を認めればいいのでしょうか?

引用元:人工知能とは 人工知能学会監修 37pより

 

日本では6月に公開されてますし、ブルーレイでも見れるので気になるかたはぜひご覧あれ。※日本語字幕が欲しい方はスペイン版がいいとクチコミがありました。