映画ハンナ・アーレントのすゝめ
2015/09/16
前置きこの記事はまだこの映画を見ていない人へ勧めるものなので、映画の具体的な中身については極力触れないように心がけています。要するにネタバレを極力避けた記事となっております。
「彼女は世界に真実を伝えた」
というキャッチフレーズのこの映画。
去年くらいにこの「ハンナ・アーレント」という映画を見たんですが、昨日思い返したようにもう一度この映画を見てみました。実在する哲学者自身を主題とする映画というのは非常に作りにくいということもあって(ダイナミックな動きがないからね)、この映画以外にぼくは知りません。いや、ウィトゲンシュタインがあった。ごめんなさい。
ほんの少しだけ脚色があるものの、基本的に事実にのっとって作られている映画です。
この映画の主人公である女性哲学者ハンナ・アーレントの時代はわりと最近なんです。1920-70年が映画の主な舞台。哲学史においては最新の部類ですね。ハンナ・アーレント自身はまさしく激動というにふさわしい人生を歩んでいて、何度も命の危機にさらされています。
そんな中にあって世論に迎合することなく自分の中でより正しいと思うものを主張していく姿勢は尊敬の念を抱かずにはいられません。本作だけを見ても彼女の言葉が決して保身から出ているのではないのがよく分かります。それと、かの有名なハイデガーもちょっと関わってきます。意外な関係で。
この映画を見ることで”悪”について非常に示唆に富んだ意見を学ぶことができるはずです。
彼女の言った
悪は悪人が作り出すのではなく、思考停止の凡人が作る。
というのはまさしく現代においてより説得力を増している気がします。
彼女は悪のこの一面を「悪の凡庸さ」という言葉で見事に言い表しているのですが(悪の陳腐さ、という言葉を使われたりしますが陳腐という意味を誤解している人も多いので凡庸さの方が分かりやすいですね)…ちょっと予備知識がないと「悪の凡庸さ…陳腐?意味わからんわ!もっと分かりやすく言えんのか!」となりそうですね。
ということで、現代においてより濃く出ている(とためのが感じている)この悪の凡庸さが気になってしかたない方は本作を見るしかありませんね。