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「君の膵臓をたべたい」を読んだ正直な感想

   

君の膵臓をたべたい

実写映画化も決まって最近騒がれだした住野よる(すみのよる)さんの小説、「君の膵臓をたべたい」。

ちょうど今月の頭くらいに読んだばかりだったので感想を。

 

ちなみにタイトルの感想の前にわざわざ「正直な」という言葉を入れたのはつまり、言うのが憚れるようなことをこれから言うからです。

この小説には本当にすばらしいところとうーん?となるところが混ざっていると(個人的には)思います。

「いやいやあんた同じくらい良い作品書けんの?」と言われたら返す言葉はないし、そこらへんにある小説よりも良い作品なことは間違いない。

でも今回はあえて自分のことは棚に上げて批評する横柄な読者としての感想をそのまま言います。

注意点ネタバレ有り。具体的なストーリーの展開にも言及するので読み進める前にご注意を。

 

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感想

まず最初に感じたのは「読みやすい」ということ。物語が淀みなくいいテンポで進んでいきます。

文章がすらすらと入ってくるし、それでいて情緒あふれる文学的表現もある。主人公とヒロイン(山内桜良)の掛け合いとかも面白い。

この主人公とヒロインの掛け合いや表現方法が苦手だって感じる人もいるとは思うけど(というかまぁタイムラインでたまに見かける)、個人的にはすごく良いと思いました。普段活字だけの本を読まない層にもウケそう。
ちなみにこの本は2016年本屋大賞で2位を受賞しているんですけど、最近同文学賞で3位だった中脇初枝さんの「世界の果てのこどもたち」を読んだばかりだったから「同じ枠なのにだいぶテイストが違うもんだなぁ。いいことだなぁ」と思いました

キャラもすごくいい。特にヒロイン。(ここらへんも好みが分かれそうだけど)男子だったらつい妄想しそうな幻想的な魅力的な性格。

この小説を通して学ばされることも多かったです。

“共病”文庫という考えも秀逸だし、死生観についてもいろいろと考えさせられることがあります。

気づく。
全ての人間が、いつか死ぬようになんて見えないってことに。

引用元:住野よる著 君の膵臓をたべたい 66,67p

前後を省くと伝わりにくいんだけど、このシーンはぼくらが日々を大事にしようと思うには充分すぎるほどに充分。

1日の価値は本来誰にとっても(余命1年宣告されている人にとっても健康な高校生とっても)同じはずだっていうのは少し無理があるとは思ったけど。いや言いたいことは分かりますけどね

ストーリー自体もすばらしい。惹き込まれます。旅行の時とか桜良の部屋に行った時とかは得も言われぬ高揚感を味わうことでしょう。(なぁ男性読者諸君)

こんな感じで序盤から中盤まではぼくの評価はうなぎのぼりで、某デスノートの某魅上照よろしく「神……」とつぶやきそうになることも何度かありました。

 

 

でも問題は後半(入院したあたりから)。

前半にも引っかかる箇所が少しはあったんだけど(好みとかの問題抜きにしてもこの書き方不自然じゃない?浮いてない?とか)、後半あたりからそれがちょっとずつ増えていって、最終盤にもなるとぼくはもうキラ信奉者とは言えない状態に………。

具体的にいうと、まず物語の展開や脈絡。

ノンフィクションではない小説、読み物だとは分かっていても、それまでの主人公のキャラと乖離した言動、行動、心境に「んー?」と不自然さを覚えました。

終盤に至るまでにいろいろな事を挟めば感動を覚えつつすんなり読めたのかもしれないんですけど、ちょっと突拍子のない感じになってしまってるかなぁと。

前半はいい意味でラノベっぽいけどは後半は悪い意味でラノベっぽい。バランスが悪くなってる、みたいな感じ。

このタイトルに込められた意味、主人公がメールで桜良に送った「君の膵臓をたべたい」の意味についても、単行本の帯にデカデカと「読後、きっとこのタイトルに涙する」と書かれていたのもあってか、事前にだいぶハードルが上がっていましたが正直肩透かしをくらったような気分。

君の爪の垢でも煎じて飲みたい→君の膵臓をたべたいへのつなぎはちょっと無理矢理感というか都合に合わせすぎな感があるし、序盤で食ったら死ぬから食えないって話してるのより相手に生きてほしくなった今君の膵臓をたべたいって言うの変じゃない?「いや食べたら君は死んじゃうから本当は食べれないんだけど、でも君の魂を少しでも受け取りたいって意味で、あえてね。君に死んでほしくない今そこにひっかけて言うのも洒落てるだろう」みたいなのは分かるけどさ。気持ちも伝わってくるけどさ。でも相手に生きて欲しい切迫感のなかでそれ言うってのはかなり無理があるような……って気持ちの方が大きくてなんともいえない気持ちに。

 

いやまぁ泣けるけどね。いい話なんだけどね。

実際涙は出たし感動もしたんだけど、涙を流しつつ頭の中で
「いやでもこの演出なんか……あざとすぎっていうか急にベタな展開に変わりすぎっていうか四月は君の嘘が記憶に新しい身としてはどうしても既視感を覚えずにはいられないというか山内桜良の病院での振る舞いとか展開とかキャラとか宮園かをりとかぶっちゃうっていうかそう考えたらそもそもテーマも似てるかもなぁでもこの作品の執筆自体はもっと前からしてたっぽいからパクリとかではないかぁでも通り魔の伏線とかも分かりやすすぎてもう予感しまくってたからなんかうーんってかあああああああああうあああああああーーのあたりから急にテイストが(ry」
っていうノイズも止められなかったわけで。

最初の話に戻すと、そういった意味で本当にすばらしいところとうーん?となるところが混ざった作品だなぁ、というのが個人的な感想です。

すごく惹かれていっただけに後半のまとめかたが棘のように刺さってしまっているというか。いや良い作品だと思うんですけd(ry

 

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余談

星の王子さまとこの本のテーマ

ヒロイン、桜良が唯一読んでお気に入りとしている本、サン・テグジュペリの星の王子様。

ぼくもこの本は好きでたまに読むんですけど、桜良が言った生きるっていうことの意味が星の王子さまの話はけっこう重なるところがありますよね。

「生きるっていうのはね」
「……」
「きっと誰かと心を通わせること。そのものを指して、生きるって呼ぶんだよ」

引用元:住野よる著 君の膵臓をたべたい 192p

「あんたたちは美しいけど、ただ咲いてるだけなんだね。あんたたちのためには、死ぬ気になんかなれないよ。そりゃ、ぼくのバラの花も、なんでもなく、そばを通ってゆく人が見たら、あんんたたちと同じ花だと思うかもしれない。だけど、あの一輪の花が、ぼくには、あんたたちみんなよりも、たいせつなんだ。だって、ぼくが水をかけた花なんだからね。覆いガラスもかけてやったんだからね。ついたてで、風にあたらないようにしてやったんだからね。不平もきいてやったし、じまん話もきいてやったし、だまっているならいるで、時には、どうしたのだろうと、きき耳をたててやった花なんだからね。ぼくのものになった花なんだからね」

引用元:サン・テグジュペリ作 内藤濯訳 星の王子さま 岩波書店 p102

主人公の名前に入っている2人の作家

物語の終盤で明かされる主人公の名前は志賀春樹。

「なんか小説家みたいな名前だね」→「どっちの人のこと言ってる?」的な掛け合いが何回かあります。

主人公の志賀春樹という名前から2人の作家が連想されるっていう話ですね。

明言されてませんけど、これはおそらく志賀直哉と村上春樹を指しているんじゃないでしょうか。

2人で旅行に行った場所はどこか(何県何市か)

これも作中で直接は語られてはいません。

ただ

・梅ヶ枝餅が名物
・南の方(次の旅行は北にいきたいなぁと言っていた)
・学問の神様が祀ってある神社がある(宝物殿や菖蒲池という池がある)
・とんこつラーメンが有名

という情報をもとに考えると、2人が旅行で行った場所は福岡県太宰府市にある太宰府天満宮だと推定できます。

作者、住野よるさんについて

Wikipediaによると住野よるさんは高校時代から執筆活動を始めて、この「君の膵臓をたべたい」を作風を変えながら何度も修正して今に至ったそうです。

ちなみにご本人のTwitterアカウントは@978_4_575_23945

本人のツイートによると性別は男性、年は現在26才~27才ということらしいです。(該当ツイートは削除されているのか現在は見つけることができませんでした)

 

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