曽野綾子「人間の基本」を読んだ感想
2016/07/27
森博嗣さんの「作家の収支」で曽野綾子さんの名前が挙がっていたので気になって読んでみた。
森さんは曽野さんのエッセイを主に読んでいるようなので、自分もエッセイの方を読んでみることに。
手にとったのは著作の中では最近(2012年)の「人間の基本」。
正直な感想を言うと「一理はあるけど」という感じ。(そもそも一理もないものなどこの世で見たいことはないのだけれど)
部分的には同意できるところも多いのだけど、読み進めていくと度々違和感が。
特にそれを感じるのは「1つの考えに縛られることなく、自分の頭で考えることが大事なんだ」と言っているわりに、本書で数多く展開される本人の主張はどれもがちがちに古く固定されてる点。
古いものも新しいものも両方吟味した結果として今の主張になっているのかもしれないけど(本人もそれっぽいことを言っている)、結果として曽野さんは(少なくても本書で紹介されているテーマのなかでは)新しい時代のものを99.9%認めていないので説得力がない。
どうも自分が慣れ親しんできた価値観を正当化するための論理をひたすら積み上げているような印象を受けた。
言っていることとやっていることが違う。いや、言っていることと言っていることが違う。
それにもし本当に偏った考えに縛られないようにしようと思ったら、もうちょっと「◯◯しなくてはいけない」「◯◯なんです」みたいに断定する言葉が少なくなる気がするのだけれど。
その根拠として用いられるのが倫理とか感覚なのも印象的だった。(これが善いか悪いかは分からない)
曽野さんの主張はさっきも言ったように同意できるものも多いのだけど、その理由に持ってくるのが主観的な感覚とか倫理によるものが多い。(これが善いか悪いかは分からない)
「昨日のことを今日の目で見ない」の件とか人間の基本の話とか的を得てるなぁと思うものもあるけど、全体的に見ると矛盾(対立)しすぎている感はある。どんなものにも矛盾はつきものだけれどそれにしてもちょっと多すぎるかなと。バランスが悪い気はする。
余談だけど、曽野さんはカトリック教徒らしい。
そういえば本の背表紙にも
ローマ法王よりヴァチカン有功十字勲章を受章
とあった。
Wikiとかで調べてみるとご高齢(御年84才)なのに、凄まじいペースで本を出していた。
自分も年をとっても元気でいたいなぁ。