森博嗣のおすすめ本5選
森博嗣のあらゆる著作を読んできたぼくが森博嗣作品で最初に読むなら何がいいかということで紹介しよう。
と思ってたけど「どれから読んでも別に問題ないな。ていうかそもそもこのテーマ自体たいして意味が無いわ」と気づいたので単純に個人的によかったものを紹介しよう。
すべてがFになる
最近アニメ化、実写ドラマ化もされた森博嗣の代表作。
月並みだがやはりこれが鉄板。
これが名古屋大学助教授として働きながら書いた処女作とは思えない完成度だ。この最初期のころから独特の”森博嗣っぽさ”がよく出ている。(理系ミスティという新たなジャンルで呼ばれた)
焼けて変色した単行本を引っ張りだしてさっき読み返してみたが、1998年出版とかなり前の作品にもかかわらず今声高に叫ばれているような人工知能の問題、将来性、本質をピタリと言い当てているのに驚いた。
ぼくはこのS&Mシリーズがやっぱり一番好きだ。思い入れがあるからかもしれないけど。
Time is moneyなんて言葉があるが、それは、時間を甘く見た言い方である。金よりも時間の方が何千倍も貴重だし、時間の価値は、つまり生命に限りなく等しいのである。
ー森博嗣著 「すべてがFになる」より
スカイ・クロラ
押井守監督によって映画化もしている人気作。
森博嗣作品の中で特に人気があるのはさっき紹介した「すべてがFになる」とこの「スカイ・クロラ」の二大巨頭だろう。
ざっくり言うと、とても美しい作品。
理屈っぽさと詩的表現のバランスも著作の中で一番良い。本人は否定すると思うが、すごく活き活きと書いてる気がした。
個人的に一番クオリティが高いのはこの作品だと思う。
ちなみにこれは時系列的にはシリーズの一番最後の物語になるが、刊行順に最初にこれを読んだ方がいいと思う。(スカイ・クロラ→ナ・バ・テア→ダウン・ツ・ヘヴン→フラッタ・リンツ・ライフ→クレイドゥ・ザ・スカイ→スカイ・イクリプス)
そっちの方が森博嗣マジックにいい感じで味わうことができるはずだ。
物事には順序というものがあって、それを順序どおり丁寧に説明すると、たいていは上手くいかない。
ー森博嗣著 「スカイ・クロラ」より
ZOKU
巨大な悪(戯)の組織 vs 正義の科学技術禁欲研究所というストーリー設定が壮大かつくだらなくてふざけてて魅力的。
森博嗣独特の着眼点というか、ぼくらの日常にある無意識的な思い込みにパッと光をあててくれるのもおもしろい。
他の作品とテイストがだいぶ違うのもいい。あらゆる意味で期待を裏切ってくれる死角のない作品。
最後の最後まで、最後の一文まで味がある。
作業が大変だったのはわかる。
人間ってのはね、自分が汗水流したものを、なかなか冷静には見ることができないものなの。ー森博嗣著 「ZOKU」より
喜嶋先生の静かな世界
「森博嗣の自伝的小説」と銘打って出されている(帯の宣伝文句)だけあって、どの作品よりも森博嗣本人の価値観や体験が色濃く表れていると感じる。本人のコンプレックスさえ見え隠れしている。
タイトルにもある”喜嶋先生”は森博嗣の理想ではないかと思えるほど尖ったキャラでセリフは名言だらけである。むしろ名言しか言わないと言ってもいい。
この本を読んでいる途中何度も目撃する洞察の鋭さに、いわゆる”理系”の人は何度手を打つか分からない。
そしてなによりも特筆すべきはそこに描かれている比類なき誠実さ、純粋さである。綺麗事だけではなくそれに伴う痛みも痛烈に描かれているのもいい。
これはいったいどういうジャンルの本になるのだろう。
自伝とは言えない。エッセイではない。ミステリー小説でもない。森博嗣の哲学を大いに語り自伝をIfストーリーにしてドラマチックに味付けした物語。あえていうなら森博嗣の哲学書的小説だろうか。
他の作品のような先を早く見たくなるような気持ちと違い、この本だけは読んでいてまだ終わってほしくないような気持ちになった。
読み終わった後もそれは続いている。
学問には王道しかない
ー森博嗣著 「喜嶋先生の静かな世界」より
人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか
小説ばかりだったのでエッセイからも一つしたい。森博嗣の小説はいいが、エッセイもいい。
特にこの本は人工知能が発展し様々なものが自動化されていく現代にあって、タイトル通り”人間”であるぼくらがどう考えていけばいいのかを教えてくれる指針になる本だ。
人間の思考の構造と特性、機械の論理の構造と特性を鋭く突いて教えてくれる。ちょうど自己啓発本と哲学書の間にあるようなテイストがクセになる。※個人の感想
理想自体が悪いはずはない。悪ければ理想ではなくなるのだから。
ー森博嗣著 「人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか」より