電王手くんの話
第1期電王戦が今日、終わった。
結果はPONANZAの2連勝。山崎叡王のがっくりした顔の上を
「もう羽生しかいない」「いや羽生さんでも無理でしょ」「この先ソフトに人間は勝てない」「\(^o^)/」
というコメントが流れていく。
対局終了後には羽生さんが次の叡王戦に参加するという発表があってコメントの流れはさらに加速。
タイムラインはこの2つ話題で大盛り上がりだ。
でも今回ぼくがする話は電王戦の内容とか将棋界の未来とか羽生さんとソフトどっちが強いとかの話とかじゃない。ソフトの指し手を現実の盤上に表現してくれるあのロボット、「電王手くん」の話だ。
電王手くんについて
このロボットを扱ったことのあるエンジニアなら誰もがこの電王手くんを見た瞬間こう叫ぶだろう。
「DENSOロボットだ!」
そう。このぐねっと動いてピカーって光って駒をサッと指してくれる機械は通称「DENSOロボット(デンソーロボット)」と言って、特定の業界ではとても有名なやつなのだ。
ちなみに初期のロボットは「電王手くん」と言って、次のバージョンが「電王手さん」、現バージョンは「超電王手さん」という名称になっているらしい。さすがに電王手様とはできなかったようだ
画像引用元:http://www.denso.co.jp/ja/aboutdenso/sponsor/denoute/
だが叫んだ次の瞬間に考えざるをえない疑問が浮かんでくる。
「え?これ……やばくね???(安全的な意味で)」
もし電王戦も何も知らないTOYOTAの作業員がこの対局風景を見かけたら大声で「バカ!!離れろ!死ぬぞ!!」と絶叫するに違いない。
それくらい危ない状況なのだ。ふつうは。
そもそもこのDENSOロボットというのは圧倒的なスピードとパワーを持つ産業用機械で人間がその可動域にいていい代物ではない。通常稼働してるところに頭なんか近づけたら99%死ぬ。
カバーで覆ったり仕切りを作ったりして人間とロボットがどう頑張っても接触できない状況で使ったり、どうしても人間が立ち入りが必要な状況がある場合は1mくらい離れた場所にセンサーを設置して、人間が接近した瞬間に駆動電源を物理的に切るようにしなければいけない。こういった安全策をとらなければ絶対使ってはいけないことになっている。
他メーカーのロボットに比べればこのDENSOロボットは安全面や精密さの点において優れているものの、むき出しのDENSOロボットが生身の人間の頭の数十センチくらい前を何も遮るものがない状態でウィーンと軽快に動いている光景はさながら野生ライオンと人が同じ檻に入れられているような印象を受ける。ぼくだったら失禁してしまうかもしれない。生きた心地がしないだろう。いやおおげさじゃなくてほんとに。
だからDENSOロボットを知っている身としては対局中ずっと対局内容よりも
「え、これどうなってんの?DENSOさんが分かってないわけないしな。エリア切ってるのかなぁ。怖すぎる いやソフトだけとかそんなんあり得ない。パワー制限(力がある程度加わると止まるようにする設定)をだいぶきつくしてもあの速度で接触したら減速かけても山崎さんぐしゃぁってなってまうし。怖すぎる 2軸目以降にリミットかけてても安全上アウトだよなぁ。特殊仕様でハード的にいかないようにしてんのかなぁ。怖すぎる ん?あぁ盤上に人間の頭が入ると作動停止するのか……。ってことはエリアセンサー切ってる?まぁさすがにハードで切ってるか。あ、デンソーの人エリアセンサーリセットさせてって言ってる。やっぱハードで入ってたか。でも怖すぎる 制御盤あの下んところかな。でもエリアセンサーあってもあの距離だったら間に合わないよね。怖すぎる プログラムいくら確認しててもバグゼロとかは言い切れないだろうし今回はDENSOつきっきりで管理するから特別にってことなのかなぁ。怖す(ry」
とか思って気が気じゃなかった。どうなってるんだろう。
教えてDENSOの方。
電王手くんの値段
余談だけどこの電王手ロボットについての値段が気になっている人もいたっぽいので調べてみた。
が、残念ながら非売品のようだ。
さっき心配してた安全上の問題もあるから一般環境じゃ絶対使えないからいや当たり前と言えば当たり前かもしれないけど。そもそも普通のDENSOロボットですら一般販売されているとは言いづらいしなぁ。
ちなみに電王手くんのベースになってるDENSOロボットの値段は車と同じくらい。今回のは鏡面加工的なのがすごいから原価はベンツのAクラスとかは余裕で買えるレベル感。