ぼくらの勉強

ぼくらのための勉強をしていきます。

三浦弘行九段のソフト不正使用疑惑を時系列でまとめてみる

      2016/10/24

今巷はこの話題で盛り上がっている。

将棋界のイベント事なんて普段そこまで大きく取り上げられないのだけど、今回に至ってはヤフートップにも再三表示され、文春にもターゲットにされ、バイキングで坂上忍が「(将棋の世界は)ここまで性善説で来てたから〜」とどこかで聞きかじってきたような話を披露するような事態にまで発展。

ぼくも今更ながら筆をとってみた。

スポンサーリンク

だいたいのことは白黒つかない。だからそのグレーがどっちにより近いのかはけっこう大事な気がする

※以下の内容には将棋用語が多分に含まれます。ご注意ください。

1手目(10月12日) 将棋連盟

将棋連盟が三浦弘行九段の出場停止処分を発表した。

10月15、16日に京都市の「天龍寺」で開幕する第29期竜王戦七番勝負について、挑戦者の三浦弘行九段が出場しないことになりましたので、お知らせいたします。
対局規定により、挑戦者決定戦に出場した丸山忠久九段が繰り上がりで渡辺明竜王と対局することになります。
当連盟は12日、三浦九段を2016年12月31日まで出場停止の処分といたしました。
今回の挑戦者の変更については、主催の読売新聞社からもご了承を得ております。

【谷川浩司会長のコメント】
七番勝負直前の変更となり、関係者や将棋ファンの皆様にご迷惑をお掛けし申し訳ありません。対局者のお二人には名棋譜を作り上げることを期待しています。

【丸山忠久九段のコメント】
日本将棋連盟の決定には個人的には賛成しかねますが、竜王戦は将棋の最高棋戦ですので全力を尽くします。

引用元:http://www.shogi.or.jp/news/2016/10/29_13.html

決着がついてないので何とも言えないが、考えてみればこれは悪手だったかもしれない。(英断の可能性もあるが) 少なくても大胆な手だったことは確かだ。はっきり黒だと言える証拠がない段階で黒と断定するような形にしてしまったのだから。

真偽は脇においておくとして、一般的には黒か白かを争う場で白を立証するという立場というのは相当厳しい。
黒の立証はソフトを不正利用していた事実が何か一つでも確認できれば確実となるが、白の立証はソフトを利用していない事実をいくら並べたてても「新たに不正の事実が出てくる可能性を否定できない」のでキリがないからだ。
よく言う悪魔の証明(消極的事実の証明)。ないことの証明はできない。なので基本的に「主張する者は証明を要し、否定する者は要しない」というのが法律の基本になっている。

これが後に三浦九段(と外野)に咎められる点にもなった。

2手目(10月13日) 橋本崇載八段

将棋界の風雲児、橋本八段も盤上に一手を投じる。
個人的にはと前置きしつつも三浦九段を「1億パーセント黒だと思っている」とツイート。
今見る限りはこれも悪手だったように思う。
橋本八段のことは個人的には好きだし言いたいことは分かるが、1億パーセント黒という表現をするべきではなかった。
橋本八段自身、後にこの件でのマスコミでの軽率な報道、誇大表現を咎めることになるのだが自分もけっこう似た手を指してしまっている。これは味が悪い感じがする。※後に該当ツイートを削除

3手目(10月18日) 三浦弘行九段

これらに対して三浦九段が反論文を出した。

公益社団法人日本将棋連盟が発表しているとおり、私三浦弘行は、第29期竜王戦七番勝負に出場できないことになり、平成28年10月12日付で出場停止処分となりました。

このことは、私が対局中の離席が多く、私の指し手がコンピュータと一致する可能性が高いことなどから、私が対局中に将棋ソフトを使用していたのではないかという疑惑を持たれたことに由来しています。しかしながら、私がこれまで対局中に将棋ソフトを使用していたことは一切ありません。連盟が私に求めた、第29期竜王戦七番勝負に出場できないこと及び休場届の提出は、全くの濡れ衣である将棋ソフト使用疑惑によるものであり、適正な手続きによる処分とは到底言い難いものです。

私は、連盟から上記疑惑を持たれたので、平成28年10月11日及び12日において、連盟からの要望がなかったにもかかわらず、自ら保有するノートパソコン2台、デスクトップパソコン2台、スマートフォンの全アプリを撮影した画像を提出しています。これら資料を精査してもらえれば、私の身の潔白が晴れることだと信じていましたが、連盟はこれらの資料を精査することなく、一方的に私に出場停止処分を下しました。本当に残念でなりません。

また、私は連盟に対し、離席が多いことやコンピュータとの一致率が高いことを示す証拠を書面により提出して欲しいことを求めています。これらの資料を分析すれば、離席と私の指し手との関連性がないことなどを示すことができると考えています。しかし、連盟からはこれらの資料の開示はなされていません。これでは、私としましては、私のどの指し手がどのコンピュータと一致しているのか、満足に知ることすらできません。

私が離席していた際に行っていたことは、将棋会館内の休憩室である「桂の間」などで横になるなどして体を休めつつ次の指し手を考えていたり、会館内のトイレに赴いていただけです。対局中の食事についても、ほとんどが出前を注文しており、疑惑を持たれている対局では、対局中に会館の外に出ることはありませんでした。

また、現在多くのプロ棋士が対局前の研究において、将棋ソフトを用いていることは周知の事実だと思われます。私も将棋ソフトを用いて対局前に研究を行っていました。将棋の序盤中盤は、盤面の状況をある程度想定できるため、コンピュータと一致率が高くなることは当然のことだと思います。また、終盤については、最善手を指せばコンピュータと一致することは不思議なことではありません。そのため、私の指し手がコンピュータと一致率が高い部分があったとしても、何も不思議なことではないと考えています。おそらく、他のプロ棋士の指し手とコンピュータの一致率も、一直線の変化では特に高くなるのではないかと思われます。

私は、今後も連盟の調査に最大限協力するつもりです。そのことにより、私にかかった疑惑が晴れると信じています。

なお、本来記者会見などを開催すべきなのかもしれませんが、書面による方が、私の意見を表明しやすいという事情から、このような形によって私の意見を述べさせていただく次第です。

平成28年10月18日

三浦弘行

一応咎めてはいるものの、自身の身の潔白を示すのに有効な手ではなかった。(そもそも完全に白だという手を指すというのは無理筋だが) 連盟の攻めに対する受けとしても弱い気がする。
盤面は先手勝勢とも後手勝勢とも言えない感じに見える。

4手目(10月19日) 週刊文春

ここに来て鋭い攻めに定評のある週刊文春が盤上に一手を投じる。内容はざっくりいえば以下の通り。端折っても長いのはご容赦を

・久保利明九段が今年の7月に行われた竜王戦トーナメントで三浦九段と対局して負けたが、その際従来よりも明らかに多い離席が多かった。証拠はないが(ソフト不正利用)をやられたという感覚があった。その後知人とソフトの手との一致率を検証した結果疑惑が確信に近づいた。

・今年9月26日、久保九段が定例棋士会で電子機器の持ち込み禁止を提案

・久保九段の提案の後、三浦九段が挙手して唐突に「持ち込みは賛成です。でも私はやっていません」と発言※久保九段はこの場でもそれ以外の場でもソフト不正利用の件で三浦名指ししたことは一度もない

・10月3日に渡辺明竜王がA級順位戦で三浦九段に負けた後、研究(実力)で負けたと思っていたが、ソフトとの一致率等を検証していた別の棋士から指摘されて自分でも検証してみたら、おかしいと思った、プロ棋士にしか分からない感覚だと言う。一致率の高さは問題ではなく、急所のタイミングでの離席やソフトとの手の一致率等で分かる、とも。

・こういったソフト不正利用疑惑があるなかでそれを隠しつつ竜王戦を迎えその後発覚するという事態になれば、スポンサーや棋士会にとって悪影響がある、と判断した渡辺竜王は内部告発を決めた。

・10月7日、渡辺竜王は島理事に連絡。羽生善治3冠と佐藤康光九段と人目の付かない場所で会いたいと言う。

・10月10日、島理事宅には事前に渡辺竜王が要望した以上の人が集まった。渡辺明竜王、佐藤天彦名人、羽生善治3冠、佐藤康光九段、千田翔太5段、谷川浩司会長、島理事の7人。

・最初は半信半疑だったが、三浦九段の離席タイミングを記録したメモや棋譜などを照らし合わせていくと段々と空気が変わっていった。

・「これはさすがに……」「いやあ、相当……」という声も出てきて、ある棋士は「これは99.9%やってますね」と断言したという。

・その後、島理事が三浦九段に不正の事実を問いただしたが認めなかった。

・10月11日、連盟理事の常務会を緊急開催。三浦九段にヒアリングを求める。三浦九段は渡辺竜王の同席を求めた。

・三枚堂達也四段から三浦九段がスマートフォンからパソコンの遠隔操作アプリのやり方を聞いていたことが分かる。

・渡辺竜王はソフトの指し手との一致率が異常に高いこと、感想戦でのコメントもソフトの候補手と一致している点、離席の多さを指摘。

・三浦九段は偶然ですと答え、離席した時は守衛室で横になって休んでいたと否定。

・問答を繰り返すうちに技巧(PC用将棋ソフト)は妻がダウンロードした、というようにシドロモドロになった結果、そこまで疑われているのであればしばらく休場する、と言ったという。

・その後連盟は三浦九段の自宅に同行し、パソコンを押収。しかしスマホの提出は拒否したという。

・記者が谷川会長に動きが遅かったのではと聞くと「確証はないですしね。いろいろ調べてはいましたけども」と答えたという。

・続けて記者が「証拠はあるのか」と聞くと「それはちょっと答えられない」と言った。

事の真偽は分からないが、この文春砲がこの盤上を大きく動かすことになったのは間違いない。

スポンサーリンク

5手目(10月20日) 羽生善治3冠&羽生理恵

文春の記事を受けてなのかは分からないが羽生三冠が(妻羽生理恵氏のツイッターを通じて)盤上に一手を指す。

一部週刊誌の行きすぎた一手をピシャリと咎め、この盤面のポイントを浮かび上がらせる。将棋同様絶妙なバランス感覚である。(個人の感想です)
少なからず疑わしいとは思っているが、白も黒も証明は難しい。そして完全に黒だという証拠が出ない限りは司法の精神に則って無罪とするべきだ、という一手。

7手目(10月21日) 三浦弘行九段

白の立証は原理的に不可能とも思える状況のなかで、今のグレーを白に近づけるべく三浦九段が再度反論の一手。
2回目の反論文は以下の通り。

一部マスコミにて事実と異なる内容が報道されているため、重要な点についてのみ誤りを指摘しておきたいと思います。

まず、平成28年10月10日、連盟理事からソフト使用疑惑があるという理由により、翌日に理事などが集まるので将棋会館に来るよう伝えられました。私は、「渡辺さん(明・竜王)はこれから戦う相手なので呼ばないでください」と伝えました。数日後に竜王戦が控えていたため、私が疑われ、身の潔白を証明する場に渡辺さんが同席していると、対局に差し障りがあると考えたからです。しかし、私の要望に反して翌日の会議の場に渡辺さんは出席していました。

次に、平成28年8月頃、三枚堂さん(達也・四段)と将棋の研究を行っていた際に、三枚堂さんがスマートフォンを用いて自宅のパソコンを操作しているのを目にしました。私は、そんなことができるのかと驚き「どうやっているの」と聞きました。彼は、私がパソコンに疎いことを知っていたため、詳しい説明はしませんでした。もちろん、私のスマートフォンに遠隔操作アプリをインストールしたことはありません。

また、対局中に控え室などでスマートフォンの操作をしたことなどはありません。

ちなみに、私はスマートフォンの提出を拒否した訳ではありません。そもそも、連盟はスマートフォンのみならずパソコンの提出すら望んでいませんでした。スマートフォンは、私が日常使用しますし、私の保有するパソコンを調べてもらえば、遠隔操作ソフトなどが導入されていないことは分かってもらえると思っていました。

もっとも、現段階に至っては、自らの潔白を証明するため、私のスマートフォンと4台のパソコンを信頼のおける調査会社等に提出し、過去にインストール及びアンインストールされたソフトの内容や、電源のオンオフの日時などの解析を行ってもらおうと考えています。調査会社等の選定については、連盟が協議に応じてくれるのであれば、連盟と共に選定したいと思います。また、私は上記スマートフォンとパソコンしか持っていませんが、家族などのスマートフォンやパソコンなども調査対象に加えて欲しいと連盟が望むのであれば、進んでそれらも調査対象に加えたいと思います。後から別のパソコンなどが怪しいと言われても困るからです。そのうえで、解析結果を私や連盟が入手する前に、調査会社等から直接世間に発表してもらおうと考えています。

本来これらの作業は、疑いをかけた連盟が実施すべきだと思います。なぜ、私が自らこのようなことを行わざるを得ないのかと思うと悲しくなります。私は単に今までどおり将棋を指したいだけなのです。

一日でも早く連盟が不当な処分を撤回してくれるよう願ってやみません。

平成28年10月21日

三浦弘行

 

黒確定の証拠はない。しかし黒の主張を強く否定できるだけの材料にはならず、疑わしい点を残したまま盤面は相変わらず灰色模様。

今後どうなっていくのか。

 - 将棋