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小野正嗣の小説「九年前の祈り」を読んだ感想

      2016/10/08

九年前の祈り

 

いわゆる純文学と呼ばれるカテゴリーのものは本当にスルメ型で読み終わった後は「なんて素晴らしい作品なんだ……最初の入りにくさが嘘のように、いや反比例するように作品全体のクオリティが上がっていくぅ」みたいな感じになるのだが、いかんせんとっつきにくさというのは現代のインスタントな刺激になれた現代人にとってはやはりけっこうな障害で。

ということで、この本を手にとってから読み終わるまでしばらく時間がかかってしまった。

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前置き以降ストーリー上の具体的なネタバレ有り。お気をつけて。

 

日常生活の情景を描写していく型がいかにも純文学っぽい。

とはいっても芥川受賞作品なんてまだスクラップ・アンド・ビルドと春の庭くらいしか読んでいないぼくには、純文学のなんたるかを語る資格はないのだけれど。

でもこの三冊に共通する雰囲気は伝わってくる。全然見当違いの可能性も充分あるのだけれど、スクラップ・アンド・ビルドの時に思ったあの”ノリ”がそうなんだろうなぁ、と思う。

 

 

物語は大きく3篇に分けられると思う。前半のさなえ編、中盤の大学生3人&トシ&マコ兄の島編、後半の千代子編。

前半はタイトルよろしく九年前と現在を行き来しながら進んでいく。

現実と幻想を織り交ぜながら物語が展開されるのも特徴だと思う。ただし、けっこう頻繁に現実と幻想を行き来するわりに作中では「ここまでが現実、ここまでが幻想」というような明確な説明がほぼ無いためそこは基本暗黙的に読者が察して読み進めることになる。(決して分かりにくくはない)

前半特に際立つのがさなえの母親の描写。とても生々しい。実生活の延長上に想像できるような性格を描くことが純文学の肝なんだろうか。

たださなえの母親に限らず、この本に出てくる登場人物の価値観はがちがちに固めれている(ように感じる)。

中でも祟り……というか「気」みたいなものがあってそれに触れたから良くなるとか悪くなるとかいう価値観。これはこの本のなかで度々登場する。

 

最初のさなえ編(障害、おそらく自閉症を持った子供とその家族)に始まり、物語の大半を占めるのが”家族”をテーマとした話だ。

そういえばスクラップ・アンド・ビルドも介護の話だったしけっこう家族系多いよな、芥川賞受賞作品は。人間について語ろうとすると自然と家族関係が中心になってしまうんだろうか。

中盤以降はそれまでの登場人物を微妙に絡めながらも基本的には別の物語が展開されていく感じ。

 

で、こういった感想の言い方は良くないのかもしれないけど、読んだ感想をざっくり言ってしまえば面白くはなかった。

(ぼくの場合は)残念ながらどの場面においても惹き込まれることはなかった。

文章としてはすごく完成されているし詩的なテクニックもいっぱいあるしおかしな点とかもないんだけど、(少なくてもぼくの琴線に対しては)エッジが立ってないというか……淡々とした物語の中にも何か味わいが欲しいのだけどそれもなかったというか……キレイにまとまってはいるけど惹きつけられるところがないというか……※偉そうに批評できるほどの文才がぼくにないことには何卒目をつぶっていただきたい

一言でまとめると、面白みがない、という感じの本だったかなぁと。※偉そうに批評できるほどの文才がぼくにないことには何卒目をつぶっていただきたい

最近芥川賞受賞作品を片っ端からあたっていて今回この本を読んだけど、個人的な感想をいうと……んーあまり評価はできないかな

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