ぼくらの研究

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空の空なればこそ

   

空の空なればこそ

「空の空なればこそ」

ぼくが好きな堀田善衞さんのエッセイのタイトルだ。(といっても堀田さんの本はこれ1冊しか読んでないんだけど)

きっかけは宮﨑駿監督。

ジブリの長編映画はもう作らない、と宣言した2013年の引退会見の映像で知った。

 

よくある勘違い

その引退会見の中で

「僕の尊敬している堀田善衛さんという作家が、最晩年ですけどエッセイで旧約聖書の伝道の書というのを”空の空なるかな”というエッセイで書いてくださったんです」

ということを言っていて宮崎ジブリ大好き人間としては買わざるを得ないと思い、すぐさまAmazonで検索してみた。

が、一致する本がない。「空の空なるかな」が見つからない。困った。

あれぇ、と思って今度はGoogleで検索する。すると検索結果に並んだのは「空の空なればこそ」という書籍の情報。著者は堀田善衞さんだった。

うん。これ監督名前間違えたな、たぶん。空の空なるかなって言っちゃうと意味全然変わっちゃうんだけどな(念のためWikipediaで堀田さんの著書一覧をチェックしたけど空の空なるかなという書籍は無かった。もしかしたら引用文のことを言ってたのかもしれないけど)

ぼくのように迷ってる人も少なからずいると思うので、いちおう注意書き。

宮崎駿監督が引退記者会見で言った「空の空なるかな」というエッセイ=「空の空なればこそ」

簡単な書評というか感想

で、監督がその会見のなかで

「非常に優れて分かりやすくて……ぼくは堀田善衛さんが書いてくださると頭悪いおまえにもう1回分かるように書いてあげるからって感じで書かれているような気がしまして……その本はずっと私の手元にあります」

って言ってた通り、読んでみたら分かりやすいし読みやすい本だった。なんというか本筋をスッと理解できる感じ。

書かれてるテーマは時代の流れとか聖書の事とか哲学とかどうしても難しい説明になったり分かりにくかったりして敬遠されがちなやつなんだけど、少しくだけた感じで分かりやすく教えてくれる。まぁ真正面から解説するというよりは堀田さんの日常に織り交ぜる形で間接的に教えてくれる感じなんだけど。でもだからこそ実感が湧きやすい。

聖書とか昔の文章とかを引用してるからどうしても知らない言葉とかがあったりするけどそれは検索して意味を調べればOK。堀田さんの言い方が簡潔だから哲学書みたいに袋小路に入ることはないと思う。

デカルトのコギトエルゴスム(我思う故に我在り)とトマスアクィナスのスムエルゴコギト(我在り故に我思う)の対比とかはもう目から鱗というか、これ以上に分かりやすいものはもうないんじゃないだろうかレベル。※ここらへんは多少の予備知識はいるかも

こういう事をざっくりと表現するとほぼ間違いなく誤解を生む曲解意訳文章になっちゃうけど(例:超訳ニーチェ) この本は短くてざっくりとした言葉なのに的を外さすいろんなことを教えてくれるのが新鮮だった。世界の宮崎駿監督が薦めるだけある。

他の細かい説明とかは蛇足かな。ぜひご一読あれ。

あとがきに至るまで……いやあとがきを読んだ後にふとタイトルを思い出すに至り、深い余韻を味うはず。この本のタイトルのつけ方天才的やな